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ららら安楽の子

小説や映画などの感想ブログです。

みんなありがとう。――『素晴らしき哉、人生!』

映画 素晴らしき哉、人生!


It's A Wonderful Life - Trailer

 

こんにちは。

突然ですが「失ってみて初めてわかるもの」、みたいに言われる系のものって色々あると思うんですけれど、その最たるものは、人なんですよね。きっと。特に恋人とか親友とか親とか仲間とかは言わずもがなそうで、でも、そこに自分も含まれているってことは忘れがちになってしまう。

僕は人と比べるとだいぶ孤独なほうだし、そのわりに孤独に対して慣れているほうでもないんだけど、それでも自分という存在だけは厳然として在る。在る限り在るってことを忘れないでいればそれでやっていける。そしてそういう思いがあながち綺麗事でもなければただの美談でもないってことは、信じてみてもいいんじゃないかなあ。

 

そういうわけで『素晴らしき哉、人生!』を観ました。そして言いたいことの大半は以上という感じになりますね。

 

 

素晴らしき哉、人生! - Wikipedia

自分の夢を追いながらも父親の急死に伴い家業の建築貸付組合(B&L)を継いで田舎の小さな町で過ごさざるを得なくなっていたジョージ・ベイリー(ジェームズ・ステュアート)は、町一番の富豪である銀行家ポッター(ライオネル・バリモア)の圧力に負けず、真面目に働いていた。家庭にも恵まれて、事業も好転しつつあったが、そんな彼に不運な出来事が起こる。そして、クリスマスの晩に自殺を図ろうとした彼に、翼をまだ持っていない二級天使のクラレンス(ヘンリー・トラヴァース)が翼を得るために彼を助ける使命を受け、現れた。天使は「生まれて来なければよかった」と言う彼のため、特別に彼が生まれて来なかった場合の世の中を見せる。そして彼がいかに素晴らしい人生を送ってきたかを理解させようとする。(wikipedia

というあらすじはwikiに任せて進みますね。

ジョージ・ベイリーが天使と出会うのはかなり後半のことで、それまではジョージ・ベイリーという人間の半生がずっと描かれるんですが、それがもうずっとおもしろい。ハピネスとハートフルに満ちている。一人の男の人生を映すだけで物語はこんなにおもしろいのかというくらい。

ジョージは野心家で青年の頃から外の世界を飛び回りたい(「先の先まで予定は詰まっている」)って夢があったんですけど、家業を継ぐことでなりゆきみたいにそれを諦めることになります。そしてメアリーっていう女の子と結婚する。彼女はジョージとは対照的にその日が楽しければ良いみたいな感じがあって、地元が好き。そしてジョージが大好き。

で、そのジョージの野心的な性格は家業においてうまく発揮される。街の住人を信頼してめちゃくちゃ良心的なローンでみんなの家を建てていく。ジョージは信頼を得る。彼の「野心」というのは、自己顕示欲ではなく「世界への期待」であって、あらゆる人々の営みに向けられた「情熱」だったわけですね。それと対比するなら富豪銀行家のポッターは保守な人間で、成功者であり続けるためにこそ人々に暴利を要求する。まあわかりやすい悪者といえばそうなんですが、この悪者感が絶妙で素晴らしいですね。作品全体がまとうユーモアにうまく馴染みつつ、しっかりと非情に悪を貫徹しています。ともあれジョージのそうした優しい野心が最後に実を結ぶのを見るのは超ハッピーです。

 

ダンスと笑いが絶えない映画ですんで、不運から追い詰められたジョージが子供に当たるシーンとかは「やめろよジョージ……おめぇはそうじゃねえだろうが……」ってなるんですが、ジョージがそういう風に絶望して自棄になる場面は、それまで心の豊かさと人々の温かさを執拗に描いてきたからこそすごく映える。人生をかけて培ったものでさえ人はふと絶望に襲われたとき容易く見失ってしまうってことが、とてもよくわかります。

「失ってみて初めてわかるもの」、基本的にわかったころには手遅れなんですよね。そして「自分」というのは失ったときに失っていることに気づきにくいのでタチが悪いものです。でもその代わり、失ったことになんとか気づきさえすれば、そのあと取り戻すことはそう難しくはないのかもしれない。それが自分。我々の目の前に天使は(たぶん)降りてこないけど、この世には幸い『素晴らしき哉、人生!』があるので、その点は有利ですね。

 

つくづく人は人と結びついているもので、僕なんかでも(映画の内容が内容なので自分のことをどうしても省みてしまいます)もしいなかったなんかしら変わっていたようです。人になにか与えたり贈ったりした記憶はほとんどないんですが、人から与えられたり贈られたりした思い出はあるので、僕の贈った記憶は贈られた人が憶えていてくれるんじゃないでしょうか。それって希望的観測ですかね。でもそう思うだけで自分が孤独じゃないと思えるんならもうそれは思っておいたほうがいいに違いなくて、だから憶えていてくれてみんなありがとう。と、言っておきたくなるわけですよ。

おれは生きてるぞー!

 

 

あと余談ですが、

これ見たあと直観的にやくしまるえつこが歌っているver.の「SMILES and TEARS」のことを思い出して今聴いていますが、あぁ、これですね。『素晴らしき哉、人生!』を観たあとはどれもこれもことごとく染みます。

 

ばいばい。